電気回路をいくら勉強してもアンテナは設計できません。線路間の空間結合
は取扱えても、その空間はかなり狭いのです。電気が線路の束縛を離れて飛翔
するということは想定外です。ちょうど魚が鳥になれないと思うように。しかし、近年の電子技術の発展は目覚しく、他の電子機器への影響で誤動作を引き起こすという、従来の電気回路だけでは取り扱えない困難で重要なEMCの問題が増えています。線路とアンテナの混在する世界で、どのようにアンテナを設計するかは、これまでの理論ではますます難しくなって来ています。本講では、これらのおおもとに立ち返る統一的理論から、線路とアンテナの違いと共通点を明らかにして、基本概念から説明します。
①線路とアンテナの統一理論はあるか?
電磁界理論から、一般化伝送線路方程式が得られる。この分布定数から、放射の概念が回路論的に理解できる。
②伝送波と放射波は分離できるか?
線路の近傍では分離できない。線路から遠い位置の伝送波が放射する。
③放射しないアンテナの設計に意味はあるか?
EMC的に優れた電気回路設計の指針となる。
④アンテナのどこから放射するか?
全体という説と端部という説がある。半波長を1量子と見れば端部放射である。
⑤Vダイポールとテーパ線路はどう違うか?
本質は同じである。テーパ間隔が狭ければ放射は小さくなる。
⑥線路はアンテナになるか?
共振線路はほぼアンテナである。携帯電話で使われている逆Fアンテナは、整合用のタップが付いた共振線路である。
⑦線路が曲がると放射するか?
曲がり部分から放射する。但し、半波長程度の広がりがある。
⑧線路を整合すれば放射しないか?
反射が無ければ、残りは伝送と放射である。構造上の不連続は放射の原因となる。
⑨基板のどこまでが回路でどこからアンテナか?
基板全体がアンテナと考え、放射しないアンテナを設計すれば、そこが回路である。
⑩回路のグランドラインはアンテナでも通用するか?
アンテナにグランドラインの概念は無い。アンテナとして動作する。
⑪回路のグランド面はアンテナのグランドか?
グランド面の大きさが半波長以下であれば、グランドの機能は少ない。 |